定年後に発送転換して生き方を変えることは、困難を伴うと考えられがちです。
退職は、仕事から解放される期待でいっぱいですが、すぐにそれは、不安と喪失感に変わります。
会社・仲間という帰属する集団があり、その中で仕事をし、人生を歩んできた人にとって、それらがなくなるのは喪失体験であり、孤独につながります。
しかも、定年後に帰属する地域社会では、職歴・肩書き・年収といったものが通用しないのです。そうした環境の中で、ひきこもり当事者と向き合わなければならない父親は、たいへん困惑するのです。
しかし、これはチャンスでもあります。発想の転換をする、またとない機会と言えます。
わが子とじっくり向き合うこともできます。親の会に参加することもできます。居場所で、若い人との交流も可能となるのです。
会社人間として経験できなかったことが、定年退職し、わが子と向き合うことで体験できるのです。これぞまさしく、人生の転換であり、価値観の転換です。
これを機会に、「産業カウンセラー」「ひきこもり相談員・支援員」などに挑戦して、心の健康の問題にチャレンジすることも面白い展開と言えます。
しかし、ここで注意して欲しいのは、会社の規範、つまり部下と上司の関係を応用したりしないことです。なぜなら、それは父親を再び「会社人間」に引き戻すことになってしまうからです。
ひきこもり当事者が部下で、父親が上司ではないのです。ひきこもり問題だけに取り組むことは、「がむしゃら時代」に戻ることにつながりますので、そこも注意が必要です。
がむしゃらに自分を追い詰め、追い込んでしまうのは、ひきこもり当事者を追い詰め、追い込んでしまうことにつながるのです。
定年退職後は、さまざまな事柄に挑戦して欲しいと思います。パソコンにチャレンジすることも良いでしょう。パソコンは、便利で面白い機器であり、今やなくてはならない道具です。
若者に教わることは、刺激的な体験です。パソコンをはさんで、親と当事者の会話が開始されることもあります。
アナログ世代が、60歳過ぎてデジタル化されていく自分を発見することも、面白い体験となるのです。
中垣内 正和(著)『ひきこもり外来』から要約しました。
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