2008年8月16日土曜日

若者に必要な時間を与えた

西欧文化圏では、若者が一人前になるまでの期間が長引くようになっています。これは、日本にも当てはまる傾向と言えますが、親たちは、自分の若い頃と単純に比較して、年齢主義的な達成を子供に求めてしまいます。

親たちの頭には、「20歳前後で就職、30歳で結婚、40歳で課長、50歳で部長、60歳で定年」といった図式が染みついているのです。

8年のひきこもりからプログラムに参加した20代男性は、単位制高校への入学を決めました。しかし、父親は、「絶対卒業」「車の免許」「良い仕事」などと次々とまくし立てました。

「遅れたから、早く早く」という年齢主義的な焦りを見せる中産階級の心性と、息子との心のつながりを解しない仕事人間の不勉強さが伝わってきます。

10年近くひきこもったのですから、あと10年の時間を当事者に与えるくらいの気持ちが求められます。居場所による支えが、欠かせないケースと言えます。

18年ひきこもった後に5年間居場所に参加し、3ヶ月間のバイトをした男性の母親は、「先がないから、しっかりしてもらわないと」などと述べました。

この母親は、長期ひきこもりにもかかわらず、就労段階まできた当事者を正当に評価できていません。父親も、ひきこもりから脱出した後の5年間、本人と向き合っていないようです。

この段階で必要なことは、「疲れたら休んで、経験から教訓を得て、再チャレンジ」というメッセージを繰り返すことです。親の焦りが当事者を追い詰めてしまう可能性についても、よく考える必要があります。

3ヶ月の就労講座を修了間際に辞めた30代男性は、「中途半端に辞めて、自信がなくなった」と述べました。この男性は、バイト就労と講座の受講を繰り返していますので、再びチャレンジする勇気させ失わなければ、大丈夫と言えるケースです。長期間悩まされた「醜貌恐怖」(姿形が醜いと思い込む)を乗り越えていることに気づく必要があります。

試行錯誤から挫折に至らないようにするためには、1年前の自分、3年前の自分、5年前の自分を振り返って、回復と変化と成長がある事実に気づいていくことが大切です。

高校中退後に不安定な感情に悩まされながら、高卒認定資格を取った10代女性は、志望大学志望学科への合格を決めました。

受験直前の不安定さには、「ちょっぴり勇気を」とアドバイスしましたが、「受験も面接も平気だった」と報告してくれました。就学の場を得ることによって、さまざまな症状がなくなると予測されるケースです。

レビンソンという学者は、「試行錯誤して40歳までに何とかすれば良い」と述べています。

青年期が長期化することは、専門家の間では「言わずもがな」の現象です。20代、30代に試行錯誤を繰り返して、人生の後半に「大器晩成」ということで良いのです。

ひきこもり期間自体を「大人になるために必要な時間であった」と、とらえる必要があります。加えて、親たちが「必要な時間を与える」「10年の時間を与える」という気持ちになれるか否かが、ひきこもり対応のポイントと言えるのです。

焦りは、リバウンドにつながり、問題の蒸し返しになることは、手痛い経験として周知のところです。

中垣内 正和(著)『ひきこもり外来』から要約しました。

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