ひきこもりには、精神医学的な対応が不要なケースもあることは確かですが、期間が長引くにつれて、神経症的な葛藤や憂うつが出入りしたり、人格の偏りや無感動化が進むケースは多く存在します。
ひきこもり外来を訪れた8割に、何らかの診断がつきました。多い診断名は、以下のようになります。
(1)社会不安障害
人前に出る緊張が強くて、回避してしまう障害。
(2)強迫性障害
手洗いなどを繰り返したり、不合理な考えで頭がいっぱいになる障害。
(3)PTSD(心的外傷後ストレス障害)
過去の恐怖体験がよみがえって苦しめられる障害。
(4)パニック障害
今にも死にそうな気分と不安定な身体症状に襲われる障害。
(5)うつ状態・うつ病
気持ちが沈みこむ「抑うつ状態」などは、高頻度で見受けられる。
ひきこもりの抑うつは、普通の社会生活を営む場合のうつ病と違った症状を呈し、
「非定型うつ」と呼ばれる。
(6)摂食障害(過食・嘔吐)
過食によって頭がマッシロになり、嘔吐によってスッキリする食行動の障害。
(7)アルコール依存症(孤独をいやす)
手のふるえ、酒乱、失禁、せん妄などをきたす。
(8)睡眠障害
寝付きが悪い、中途で目がさめる、昼夜逆転など。
(9)パーソナリティ障害
当事者も周囲も困るような人格の偏り。
ひきこもりに多いパーソナリティ障害は、以下の通りです。
(A)境界性パーソナリティ障害
感情の起伏が激しく、「過剰な活動に荒れる時期」と、「ひきこもりの時期」を繰り返す。
(B)自己愛性パーソナリティ障害
「傷つくことを恐れてひきこもる時期」と、「慢心して多動となる時期」を繰り返す。
(C)シゾイド・パーソナリティ障害
他人や異性に興味を持たず、孤独でいることが平気な障害。
(D)回避性パーソナリティ障害
人前での緊張から、回避が進み、日常生活が成り立たなくなる。
(E)未熟型パーソナリティ障害
わがままによって周囲を支配し、周囲も受け入れるために社会性が育たず、未熟な段階のまま固定化する。一方的な自己主張しかできない。
(F)妄想性パーソナリティ障害
何事にも猜疑心を向ける障害。
パーソナリティ障害は、完全主義の傾向が強いために、家族や支援者も悩まされることが多いのが現状です。
サポートする場合は、専門家の見立てを得ておくことが、効率的な活動のために欠かせないと言えます。
医療と支援者などの間に連携があること、特に、ひきこもりに理解のある心療内科医・精神科医・臨床心理士などとの連携が望まれるところです。
社会不安障害・うつ病・摂食障害・強迫性障害・パニック障害などを中心に、薬物療法の有効性が知られています。パーソナリティ障害も、薬物を組み合わせて使用することで症状の軽減がはかられます。
ひきこもりの対社会不安・対人不安・抑うつ状態には、マイナーと呼ばれる軽い安定剤が即効性を示しますが、乱用や依存に陥らないためには、医師の指導を受けることが必要です。
抗うつ薬の主流であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、欧米から遅れること10年、2000年前後に日本に登場しました。SSRIは、前出の疾患などに幅広い適応をとっています。
しかし、ひきこもり家族は、安定剤・睡眠剤・抗うつ薬などに対する偏見が強いと言えます。依存性物質であるアルコールに対する無防備さに比較して、薬物や精神医療に対する偏見があります。
SSRIなどの薬物療法に合わせて、動機づけ療法・認知行動療法、居場所・親の会・家族教室などの集団療法を複合的に行うことで、治療効果が飛躍的に高まります。
中垣内 正和(著)『ひきこもり外来』から要約しました。
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