本著は、学校や仕事への参加や友達付き合いがないままに、自宅や自室中心の生活を半年以上続けている人を対象に書かれています。
このような人付き合いのない状態は、「不登校・ひきこもり」と呼ばれますが、この呼ばれ方を受け入れるかどうかは、どちらでも良いことです。
問題になるのは、外部との交流がなくなることによって、考えすぎたり、落ち込んだり、あきらめてしまったり、マイナス思考に陥っていないかということです。
また、家族ともうまくいかなくなって、気まずい思いや苛立ちがつのっていないかということです。そして、運動不足や栄養の偏りのために、心身を痛めていないかということです。
自分から制限を加えた、狭い範囲での生活によって、狭い見方にみ陥り、希望を見いだせなくなったりしている人に、この著書を読んでいただきたいのです。
ひきこもりから脱出したケースは増加しています。
彼らが、ひきこもり生活についての言葉を残してくれていますので、「ひきこもり中の気持ち」について知ることができます。
「どうにもならなかった」
これは、大学受験の失敗から20年こもった40歳男性の言葉ですが、ひきこもりが不本意であったことを語っています。同じ思いのままに20年も続くことがあるという、ひきこもりの本質が伝わる言葉です。
この間、親はさまざまな機関に相談し続けています。親と当事者が、同じ思いにさいなまれてきたという点で、きわめて印象的です。
「きっかけがなかった」
これは、対人ストレスから14年ひきこもった30代男性の言葉です。彼は、「軽い気持ち」から出勤できなくなり、同僚の目を気にした自宅生活がズルズルと続いて、14年経ってしまったのです。
多くの人の支援を受けて、現在は仕事に戻る訓練をしていますが、「なぜこんなに長く続いたかわからない」とぼやきながら、「早く仕事をしたい」と希望を語っています。
「どこへ行ったら良いかわからなかった」
軽い気持ちから10年ひきこもった20代男性は、「10年遅れ」で、念願の高校生になりました。この10年間に、社会人の受け入れや高卒認定資格など教育システムが変化してきたことが効いたケースと言えます。
人前に出る恐怖から、中学不登校、高校中退となった20代女性は、勇気を出して自分から外来を訪れました。「どこへ行ったら良いかわからなかった」「行くところがなかった」と言います。彼女は、居場所に通う中で、会社員と結婚して、今では一児の母親になっています。
「暗闇をひとりぼっちで歩いていた」
これは、社会不安障害から18年ひきこもった30代男性の言葉ですが、ひきこもりに伴う孤独感が伝わってきます。ひきこもりは、段階的に悪化することもあります。
親の対応も後手に回り、公的な支援によって救出されたときには、栄養障害などによる精神的な不安定さが目立ちました。
さまざまな障害を合併していることが予測されましたが、栄養状態の改善により、詩人のような珠玉の言葉を残してくれました。
ひきこもりの原因は、学校や会社での対人ストレス・いじめ・人前での緊張・うつ状態に加えて、新しい学校や会社になじめないことや就労中の挫折など多様です。
若い世代にとって、学校や会社に適応していくことが大変な時代であることが示されていると言えます。
ひきこもりは、「行きたくない」「少し休んでみたい」といった軽い気持ちから始まることが多いと言うこともできます。
軽いはずの気持ちが2日3日と続くうちに、いつしかどうしようもなくなっている、それが「ひきこもり」の特徴なのです。
中垣内 正和(著)『ひきこもり外来』から要約しました。
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