中学2年から18年間ひきこもった30代男性には、過敏性大腸によると思われる栄養障害と対人恐怖・強迫性障害が認められました。
「何もなかった以前と比べて、良いことも辛いこともある今が良い」というのは、居場所の中で彼が語った言葉ですが、リバウンドを防ぐ効果のある含蓄に富んだ言葉と言えます。
20年前後の長期ひきこもりになると、その間のエピソードを語れる人は、ほとんどいません。小学校や中学校のエピソードは語れても、高校中退前後やひきこもり後について語れないのです。
語れないのは、「何も生じなかった」からです。親も同様に、ひきこもり期間の出来事について語れないで、不登校・ひきこもり開始前後の出来事に終始することが多いのです。
ひきこもりが長期間続く場合に、当事者や親の時間までも停滞してしまうことがわかります。
ひきこもりを脱した当事者に、「ひきこもった時代と現在とでは、どちらが良いか?」と質問したところ、「以前に戻りたい」という人は一人もいませんでした。
この事実が、ひきこもり問題の本質を明確に語ってくれています。
「対人場面やいじめから解放された」と感じる当初はともかく、意図して長期間ひきこもりたい当事者はいないのです。
ひきこもりを長期化させる要因として、当事者の行動や素因の他に、家族関係・教育・精神保健福祉・社会のあり方など、外部にもさまざまな要因があることが指摘できるのです。
当事者にとって、格別の勇気を出して参加した居場所・フリースペースには、特別の意味があるのです。彼らは、何とかしたいと願いながら、「ひきこもった状況」と「居場所の居心地」を比較しています。
トラウマを感じなくてすみ、未来への可能性を感じられる「居心地の良い場所」が、居場所として受け入れられるのです。そこは、「良いことも辛いこともある今が良い」と思える場所なのです。
中垣内 正和(著)『ひきこもり外来』から要約しました。
2008年9月18日木曜日
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